パッシブソーラー

・パッシブソーラーの仕組み ・夏も快適なパッシブソーラー ・屋根からの空気取り入れ ・基礎廻りの仕様 ・防蟻剤について ・ダクトについて ・ランニングコスト
パッシブソーラーの仕組み

パッシブソーラーハウスとは

太陽の熱をそのまま利用して冬の暖房に利用するシステムで、太陽光発電のように光を電気に変換するアクティブソーラーとは仕組みが違います。

商品名はそよ風

この優れたシステムを少しでも安価に、設計者にも扱いやすくするために、OMソーラーより分離独立して環境創機株式会社が提供しています。

 

私の事務所では、OMソーラーも含めてこれまで3棟のパッシブソーラーハウスを設計してきましたが、震災以降これから益々ソーラーハウスが増えてゆくことが予想されます。

 

太陽光発電は屋根の向き、勾配、面積が条件を満たせばある程度性能を発揮する事が可能で、設計上それほど難しくありません。しかしパッシブソーラーの場合は、空気の流れを工夫し気密性を確保する工事が必要となるために、しっかりとした準備が必要です。

 

分離発注でこのシステムを行っていますので、細かいところまで業者任せにせずに進めてきたことを自負しています。

 

このシステムがどれだけ素晴らしいのかを、コラムで紹介してゆきます。

実際見てみたい!という方には見学または直接説明をさせていただきます。

 

夏も快適なパッシブソーラー

夏の日が落ちた後の空気の流れを示しています。

冬と同様、軒先から空気が取り込まれた後

屋根面の放射冷却で空気温度が下がります。

 

その空気が床下に送り込まれ、基礎コンクリートにさらに熱を

奪われて部屋の中に放出されるのです。

 

屋根面での放射冷却が期待できない場合も

基礎で温度が下がる効果は期待できます。

床下の空気がひんやりしているのを経験した人も多いはず。

 

おおよそ外気温度-4度くらいは期待出来ます。

床の吹き出し口(ガラリ)に手をかざすと涼しい風が出てきますよ。

 

また空気の流れ(緩やかですが)があるので

体感温度はもう少し下がります。

 

さらに、夏の夜間戸締まりをした後も外気が効果的に取り込まれ

家の中廻ってゆく効果は本当に気持ちの良いものです。

 

但し熱帯夜で夜間の温度も30度に近くなると

この冷風効果は期待出来ないので、その場合は

エアコンなどの補助冷房か扇風機が必要になります。

 

他には、ロフトなどにエアコンを設置して

そこでつくられた冷気を強制的に床下に送り込み

家の中で空気を循環させる、全館冷房の方式も可能です。

 

屋根からの空気取り入れ

屋根の軒先から空気を取り入れる為の動力は

ダクト内のファンによりますが、

実際どこからどのように流れて、加熱されるのかを

このコーナーでお知らせします。

 

 

空気は軒先の野地板に開けられた穴から

屋根上部の通気層に流れるようになります。

通気層高さは30mm。

ここを空気が流れてゆく内に加熱されるのですが

太陽光で熱くなった屋根面(ガルバリウム鋼板)になるべく接触しながら

流れてゆかないと熱をたくさん受け取る事が出来ません。

 

 

そのため、通気層のなかで空気がもっと暴れるように

採熱板を設けています。

流れを乱してしまうことで、空気と屋根板の接触が多くなり

空気が加熱される訳です。

 

実際、屋根を触ってみると

採熱板があるところでは温度が低く(熱を空気に奪われた)

無いところでは温度が高いのが確認出来ます。

 

以前のシステムでは強化ガラスを屋根面に取り付けて

空気を加熱する方法が主流でしたが、

施工コストが安くメンテナンスが容易であるために

採熱板を使用しています。

 

 

 

基礎廻りの仕様

パッシブソーラーの工事で重要なポイントは「気密」と「断熱」

 

屋根で加熱された空気を床下に送る仕組みのなかで

空気が漏れたり外部から他の空気が侵入したりすると

十分に性能が発揮されません。

床下の基礎についても気密と断熱は重要です。

基礎の立ち上がりの上、土台が敷かれるところに気密材を設置します。

写真でおわかりでしょうか。これは天端リストという建材で

やや厚めの樹脂シートにゴムのパイプを2本平行に取り付けられたテープです。

 

基礎と土台の間に挟むことで、

床下に送られた空気は外部に漏れることはありません。

 

但し、つなぎ目とコーナーは隙間が出来る可能性があるので、

内側からコーキングなどの処置も忘れず行います。

 

断熱は、立ち上がり部分と、外部から60~90cmの水平部に

ボード状の断熱材を張り付けます。

 

なるべく熱貫流率の低い断熱材を使いますが

ここでは、カネライトフォームF3を採用しました。

 

他には基礎の外側に断熱材を張る方法もありますが、

断熱材の仕上げコストとシロアリ対策のために

私の事務所では採用していません。

一通り工事が終わると

今度はいよいよ木造の躯体工事が始まります。

防蟻剤について

パッシブソーラーハウスでは、太陽光で加熱された空気を床下に送りそこから屋内に立ち上げる方式であるため、

シロアリ防蟻剤は一般的には禁止されています。

理由は防蟻剤の多くには健康被害を引き起こす可能性のある成分が含まれているから。

 

そのため土台や柱はシロアリが嫌うヒノキやヒバを使います。

私も最初の事例ではこのような材料を採用しました。

 

しかしその後はホウ酸塩の防蟻剤を使うようになりました。

エコボロンというもの。

揮発性はないため半永久的に防蟻性能が発揮され

万一人体に入っても無害なのです。

この防蟻剤は透明の液体のため、施工箇所を確認しやすいよう染料を混ぜています。

和室真壁など柱を表しにする場合は透明のまま使用します。

 

ダクトについて

加熱された空気はダクトを通り床下に送り込まれます。

当然ですが、断熱性能が無いと、途中で熱が逃げてしまいますので

グラスウールダクトと呼ばれるものを使います。

 

外径直径25cm、内径20cm、

内部と外部にアルミシートが張られた固いグラスウールです。

 

空調管材を扱う業者さんに発注しますが

バラではなかなか手に入らないので注意が必要です。

6本一組。それなりの価格とボリュームがあるため

中途半端に余ると困った事になります。

もちろん、少しだけ足りない場合も同様です。

 

このダクトを直列につないで床下までのルートを確保します。

つなぎ目は木工ボンドで切断面を補強してからアルミテープを巻き付けます。

曲げ物はないため、エルボは自分でつくるのですが、これが難しい。

環境創機さんからいただいた曲線グラフに合わせてカッターを入れる

のですがなかなか上手く行きません。

 

なぜならダクトには25mmの厚さがあるため。

直角にカッターを立てて切っても、つなげるときには上手く行かず

結局少しずつ削りながら合わせることになります。

ようやく出来上がったのがこちら。

今回はちょっとマニアックな話題でしたが

ダクトも意外に手作りなのであります。

 

 

ランニングコスト

ランニングコストについて

そよ風というソーラーはファンで外気を取り込む方式です。

排気ファン と 取入ファン

 

排気ファン役割は夏の排熱が主な役割です。

このソーラーハウスでは、シングルファンタイプを選択していまして

T610S 最大31Wの消費電力です。

またメンテナンスは屋内側より行えますので、交換修理は容易です。

取入ファンは、冬の昼間に熱せられた外気を、

夏の夜間に放射冷却された外気を、それぞれ取り込む役割があります。

ハイパー19Dタイプを選択、最大85Wの消費電力です。

スイッチはこちらの制御盤となります。

冬モード・春秋モード・夏モードをマニュアル切替で

季節に応じてボタンを押していただく方式のため、きわめて単純。

またSDカード※を差し込むと毎日のデータを取ることが出来ます。

(※写真は旧ヴァージョンのため、SDカード対応ではありません)

気になる年間の消費電力については、年間5,000円程度※※です。

目安の電気代として以下のようにお考えください。

冬暖房運転  400円/月 取り入れ運転

春・秋の運転 350円/月 取り入れ・排気運転・停止時間もあるため

夏の運転   700円/月 排気運転・取り入れ運転

 

月平均400円余りのランニングコストで快適な環境が得られるのです。

(※※上記ファンの選択と使い方でばらつきがあります。屋内循環運転は別)